Talus Nexus: オンチェーンAIエコノミーに向けたエージェント型ワークフロー層の評価
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TL;DR
- TalusはNexusを提供している。Moveベースのフレームワークで、オンチェーンとオフチェーンのツールを検証可能なDAG(有向非巡回グラフ)ワークフローとして構成し、現在は信頼された「Leader」サービスが調整し、今後は安全なエンクレーブと分散化を目指す。
- このスタックは新興のエージェント経済を狙い、ツール登録、決済レール、ガス予算、マーケットプレイスを統合し、ツールビルダーとエージェント運用者が利用状況を監査可能な形で収益化できるようにする。
- Cosmos SDK + Move VMで構築する専用チェーンProtochainへのロードマップが公開されているが、現行の調整レイヤーはSuiであり、SuiとWalrusストレージの統合が実運用基盤となっている。
- トークン計画は進化途上。過去のUSを導入した2025年ライトペーパーが併記されている。
- 実行リスクはLeaderの分散化、トークン経済の確定、Protochain性能の実証に集中しており、Sui・Walrus・オフチェーンサービスを跨ぐ開発者体験を維持できるかが鍵となる。
Talusが構築しているもの/していないもの
Talusは、AI推論そのもののマーケットではなく、自律エージェントの調整と収益化を担うレイヤーとして自らを位置づけている。中核製品のNexusは、ツール呼び出し、外部API、オンチェーンロジックをSui Moveで記述されたDAGワークフローにまとめられる。設計は検証可能性、権限キャップに基づくアクセス制御、スキーマに基づくデータフローを重視し、各ツール呼び出しをオンチェーンで監査できる。Talusはこれを、Tool Marketplace、Agent Marketplace、Agent-as-a-Serviceといったマーケット層で補完し、エージェント機能の発見と収益化を支援する。
一方、Talusは自前の大規模言語モデルやGPUネットワークを運営していない。ツールビルダーが既存のAPIやサービス(OpenAI、ベクター検索、トレーディングシステム、データ提供など)をラップし、Nexusに登録することを想定している。このため、RitualやBittensorのような計算ネットワークとは補完関係にあり、Nexusワークフ ロー内のツールとして組み込むことができる。
アーキテクチャ:オンチェーン制御プレーンとオフチェーン実行
オンチェーン(Sui Move)
オンチェーンコンポーネントはSui上に存在し、調整プレーンを提供する。
- ワークフローエンジン – DAGのセマンティクスはエントリーグループ、分岐バリアント、並行性チェックを含む。実行前に競合状態を防ぐ静的検証も行う。
- プリミティブ –
ProofOfUID
はパッケージ間の認証済みメッセージングを緩やかな結合で実現し、OwnerCap
/CloneableOwnerCap
は能力ベースの権限管理を提供する。ProvenValue
とNexusData
構造体は、データをインラインまたはリモートストレージ参照として渡す方法を定義する。 - Default TAP(Talus Agent Package) – ワークシート(証明オブジェクト)の作成、ワークフロー実行のトリガー、ツール結果の確認を、Nexus Interface v1に沿って示すリファレンスエージェント。