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RWAプロトコルのTVLが初めてDEXのTVLを上回る — DeFiの歴史的なクロスオーバーが意味するもの

· 約 13 分
Dora Noda
Software Engineer

分散型金融(DeFi)の歴史上初めて、現実資産(RWA)プロトコルの預かり資産総額(TVL)が分散型取引所(DEX)を上回りました。2025 年後半、RWA の TVL は前年比 210% 増の 170 億ドルを突破し、一方で DEX の流動性は停滞、あるいは縮小しました。2026 年 3 月までに、パブリックブロックチェーン上のトークン化された現実資産は 260 億ドルを超え、トークン化された米国債だけでも 110 億ドルの大台を突破しました。

これは単なる統計上の珍事ではありません。DeFi の本来の目的を再定義する構造的な転換点なのです。

トレードのカジノから決済レイヤーへ

DeFi の成り立ちの物語は、パーミッションレスな取引の上に築かれました。Uniswap、SushiSwap、Curve は、流動性プール、イールドファーミング、自動マーケットメーカー(AMM)を通じてこのセクターのアイデンティティを定義しました。長年、DEX の TVL は、エコシステムがどれだけの資本を引きつけ、維持できるかを示す重要な指標でした。

その時代は終わりを迎えつつあります。2025 年 1 月に月間スポット取引高 3,130 億ドルを記録した Solana のミームコイン主導の DEX 経済は、11 月には 1,040 億ドルへと 66.7% 減少しました。Solana の主要なトークンローンチパッドである Pump は、Raydium における「卒業」トークンの取引ボリュームが、同期間に 464 億ドルから 51 億ドルへと 89% も急落しました。個人トレーダーが投機的なポジションから撤退するにつれ、マルチチェーン全体で DEX の TVL は縮小しました。

一方で、RWA プロトコルは正反対の動きを見せました。このセクターの TVL は 2025 年初頭の約 55 億ドルから年末には 170 億ドル以上へと 3 倍に増加し、RWA は DeFi カテゴリーのトップ 10 圏外から第 5 位へと躍進、その過程で DEX を追い抜きました。この乖離は顕著でした。RWA トークンがセクター平均で +185.8% のリターンを上げた一方で、AI 関連の仮想通貨トークンはその価値の -50.2% を失い、記録されている主要なクリプト・ナラティブの中で最大のパフォーマンス差を記録しました。

クロスオーバーの背後にある機関投資家の資本

RWA プロトコルに資本を呼び込んでいるのは、ハイプ(熱狂)ではなく利回りです。

「高金利の長期化(higher rates for longer)」というマクロ環境において、トークン化された米国債は最も魅力的なオンチェーン利回り商品となりました。市場は 2024 年の 17 億ドルから 2025 年末には 73 億ドルへと急拡大し(前年比 256% 増)、2026 年 3 月までに 110 億ドルを突破、第 1 四半期だけでさらに 27% 成長しました。

Securitize を通じて Ethereum 上でローンチされた BlackRock の BUIDL ファンドは、運用資産残高(AUM)が 19 億ドルに達し、単一のトークン化製品として最大級のものとなりました。Circle の USYC トークンは約 22 億ドルの供給量で BUIDL を追い抜き、トークン化米国債の競争が独占ではなく激化していることを示しました。Franklin Templeton の BENJI トークンや Fidelity のトークン化米国債市場への参入も、この仮説をさらに裏付けています。

数字は機関投資家の階段を上り続けています。2.2 兆ドルの伝統的資産を管理する Invesco は、2026 年 3 月に Superstate のトークン化米国債ファンドの管理を引き継ぎました。JPMorgan の Onyx プラットフォームは、9,000 億ドル以上のトークン化レポ取引を処理しました。Citi、HSBC、Goldman Sachs はすべて、債券、貿易金融、プライベート・エクイティのトークン化パイロットをローンチまたは発表しています。

MakerDAO(現在の Sky)は DeFi と RWA の交差点に位置し、DAI を裏付ける 20 億ドル以上の RWA 担保を保有しています。現在、RWA から生成される収益は Sky のプロトコル総収入の約 60% を占めています。これは、Maker が主にクリプト担保の貸付プロトコルであった 2022 年には想像もできなかった統計です。

なぜ DEX が停滞し、RWA が急増したのか

このクロスオーバーは単なる RWA の成長だけでなく、分散型取引所が直面している構造的な逆風も反映しています。

個人投資家の流動性の枯渇。 2024 年から 2025 年初頭を象徴したミームコインのサイクルは、個人投資家の資本を使い果たしました。2025 年には 1,160 万件のトークン失敗が記録され(これは記録された全プロジェクト消滅の 86.3% に相当)、投機的な意欲は蒸発しました。ミームコインで資金を失ったトレーダーたちは、ブルーチップの DEX 流動性プールに資金を戻すことはありませんでした。彼らは市場を去ったのです。

機関投資家の資本はボラティリティではなく利回りを求める。 2026 年に DeFi に流入する資本は、2020 年のイールドファーマーとは異なるリスクプロファイルを持っています。機関投資家のアロケーターは、規制の明確性と予測可能なリターンを求めています。BlackRock の名前を冠し、毎日収益が発生する利回り 4-5% のトークン化米国債は、DEX で流動性を提供してインパーマネント・ロスがリターンを食いつぶさないよう祈るのとは、根本的に異なる製品です。

規制の重力。 米国の GENIUS 法、欧州の MiCA、そして UAE の包括的な仮想通貨監督枠組みはすべて、規制された資産裏付け型の製品を支持するコンプライアンス構造を作り出しています。DEX は規制のグレーゾーンで運営されており、機関投資家の資本はますますこれを避けるようになっています。対照的に、RWA プロトコルは、ブロックチェーン決済に包まれた米国債、債券、マネーマーケット商品といった、規制当局が理解できる仕組みの上に構築されています。

利回り追求型の革命

RWA のクロスオーバーにおいて、おそらく最も過小評価されている側面は、DeFi のコアな担保タイプとして「利回り付きステーブルコイン」が台頭したことです。

機関投資家の財務戦略に組み込まれた利回り付きステーブルコインは、過去 1 年間で 95 億ドルから 200 億ドル以上に増加し、平均約 5% の利回りを提供しています。その価値提案はシンプルです。安定性、予測可能性、そして利回りが 1 つの製品に集約されていることです。

これにより、DeFi のコンポーザビリティ(構成可能性)レイヤーが変化します。ステーブルコインがデフォルトで利回りを生むようになると(トークン化された米国債やマネーマーケット商品によって裏打ちされている場合)、その上に構築されたすべての DeFi プロトコルがその利回りの底上げを継承します。貸付プロトコル、予測市場、さらには DEX でさえ、ベースとなる担保が受動的に収益を生むことで恩恵を受けます。

このシフトは、第一段階のトークン化(資産をオンチェーンに乗せること)から、第二段階の金融化(トークン化された資産を、機関投資家が認識できる利回り市場やリスク管理を備えた真の金融商品のように機能させること)への移行を意味します。これが DeFi 成長の次のフェーズの源泉となります。新しい投機的なプリミティブを発明することではなく、既存の金融商品をコンポーザブル(構成可能)でプログラマブルにすることから生まれるのです。

このクロスオーバーは永続的か?

重要な問いは、DEX の TVL(預かり資産)がかつての地位を奪還するのか、それともこのクロスオーバーが DeFi のヒエラルキーにおける恒久的な再編を意味しているのかという点です。

永続性を支持する主張。 不透明なマクロ環境下では、機関投資家の資金配分パターンは利回り付き資産を好みます。金利が高止まりし、規制の枠組みが成熟し続ける限り、RWA プロトコルの構造的な優位性は複利的に高まります。マッキンゼーは、RWA トークン化市場が 2030 年までに 2 兆ドルに達する可能性があると予測しています。国際決済銀行(BIS)は、2034 年までに世界全体の GDP の 10% がトークン化される可能性があると推定しています。これらの予測のわずかな一部でも実現すれば、RWA の TVL は DEX の TVL を桁違いに凌駕するでしょう。

逆転を支持する主張。 歴史的に DEX の TVL は、強気相場の投機期間中に急増します。次回の暗号資産マニアがいつ到来しても、個人投資家の取引ボリュームが再燃し、DEX の流動性が再び RWA の水準を上回る可能性があります。未決済建玉が 95.7 億ドルに達した Hyperliquid のような Perp(無期限先物)DEX は、現物 DEX には欠けている成長ベクトルを象徴しています。また、AI エージェントを介した取引の出現は、個人投資家の投機に依存しない、まったく新しい形態の DEX ボリュームを牽引する可能性があります。

最も可能性の高い結末 は、どちらの両極端でもありません。RWA プロトコルは、DeFi の「堅実な利回り」レイヤーとして機関投資家の資金を吸収し続け、一方で DEX は個人投資家の投機場から、デリバティブ、クロスチェーン決済、エージェント介在型取引のための特化したインフラへと進化するでしょう。これら 2 つのカテゴリーは、同じ資本を直接奪い合うのではなく、機能的に分化していくことになります。

ビルダーにとっての意味

プロトコルチームや開発者にとって、RWA と DEX のクロスオーバーは明確なシグナルを送っています。市場が対価を支払うのは「目新しさ」ではなく「実用性」であるということです。

2025 年から 2026 年にかけて最も急速に成長したプロトコルは、巧妙なトークノミクスや積極的な流動性マイニングプログラムを持つものではありませんでした。それらは、現実世界の資産から得られる真の利回りをオンチェーンの参加者にもたらしたものでした。Centrifuge、Maple Finance、Ondo Finance、そして Maker / Sky への変革はすべて、DeFi を伝統的な金融商品に接続することで、投機的な取引手数料では太刀打ちできない持続可能なプロトコル収益が創出されることを証明しています。

ブロックチェーンインフラを構築する開発者にとって、このシフトは、需要がコンプライアンス対応の機関投資家グレードのツールへと移行していることを意味します。信頼性の高い RPC エンドポイント、インデックス化されたオンチェーンデータ、そして DeFi プロトコルと機関投資家の報告要件の両方に対応できる API が求められています。

静かな革命

RWA と DEX の TVL クロスオーバーは、劇的な市場暴落やプロトコルの脆弱性悪用によって起きたのではありません。それは徐々に、そしてある時一気に起こりました。機関投資家の資金が、DeFi の投機レイヤーが決して提供できなかったもの、つまり「予測可能性」を提供するオンチェーンの利回り商品へと流れ込んだのです。

DeFi は死んでいるのではありません。成熟しているのです。現在パブリックブロックチェーン上にある 260 億ドルのトークン化された現実資産は、最終的にオンチェーンに移行する可能性がある 600 兆ドルの世界金融資産と比較すれば、誤差の範囲に過ぎません。私たちが目撃しているクロスオーバーの瞬間は、DeFi の物語の終わりではなく、より壮大な物語への序章です。そこではブロックチェーンが、世界の投機家のためのカジノではなく、世界の資本市場のための決済インフラとして機能します。

もはや、現実資産がオンチェーンに属するかどうかを問う段階ではありません。資本がすでにその答えを出しています。今の問いは、残りの金融システムがどれほど早くそれに続くか、ということです。


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